「物心がついた頃から」という言葉は、度々耳にするフレーズです。
「ものごころ」
とは、一般的には”はっきりと記憶することができる”というニュアンスがある言葉です。
つまり、「物心がついた頃」というのは
少なくとも、記憶を<さかのぼる>ことができる時期であると考えられます。
しかしながら、実は本来の意味としては
世間の動きが分かる
人の感情が分かる
と定義されているようです。
もちろん、これらは「記憶」はもととより「認識力」
更に「感情」といったものがなければ、できないことです。
それでは「物心がつく時期」というのは、大体どのくらいのことなのでしょうか?
目次
記憶を<定着させる>ことができるようになっているか?
前提として、もちろん「個人差」があるものになります。
ここでは、その”仕組み”や”段階”から少し順序立てて考えていきましょう。
まず最初に、”おしゃべりができる”ということは
「単語を組み合わせることができる」ということになります。
これは、「おおよそ2歳」くらいの時期ということになります。
おしゃべりは、それ自体がコミュニケーションでもありますが
その繰り返しによって、「会話の内容」を<記憶する>ことができるようになります。
記憶というのは、「言語能力」に大きく左右されるものであり
しゃべれるようになる前の時期というのは、記憶の定着力が非常に低いものなのです。
「おもちゃの場所」を覚えていることと、
会話の内容を覚えていることは、微妙に異なるものなのです。
もちろん言葉の覚えが速い子、「口が達者」な傾向のある子というのは
コミュニケーション能力の発達も早い傾向があります。
つまり、物心がつくのも早い傾向があると言えるのです。
「人が今どう思っているのか?」を感じることができる
2歳前後というのは、「イヤイヤ期」と呼ばれる1つの反抗期の真っ最中でもあります。
何に対しても、否定・反抗をすることによって
「相手がどうするのか」を、観察している側面もあります。
そして、この時期には
「自分が何をしたら相手がどう思うのか」
ということを、察することができるようになります。
この能力は、円滑なコミュニケーションにとって欠かせないものです。
この段階において、「ダメなことはダメ」と教えることが
その後の成長にとって大切であり、これは「しつけ」にもつながる要素です。
おもちゃを貸せる子・貸さない子・奪う子、それぞれ差が現れてくる時期でもあります。

「2~3歳くらい」から徐々に物心がついていく
以上のことから、世間の動きや相手の気持ちが図れるようになる
おおよそ「2~3歳の間」こそ、物心がつく時期であると考えられます。
早い子では、2歳前の記憶があることも珍しくありません。
つまり、2歳前後には”ものごころがついている”とも言えるのです。
幼い頃というのは、”世間”とは「家庭」や「親」と同義語になります。
- コミュニケーションが取れる
- 相手の気持ちが分かる
- 何をすればどうなるか(因果関係)判断できる
こういったことは、家庭で育まれると言えます。
もちろん、これらは早いことにこしたことはありません。
ただし、家族以外の人との関わりの中で会得するものも多く
外に出る・人との触れ合いといったことも、情緒の発達には不可欠なのです。
「記憶」ができはじめる時期とは
今幼いお子様を育てている真っ只中の親御様達は、
はじめて立てた日のこと
はじめて旅行で見せてあげた景色
この子はちゃんと”その時”を覚えていてくれるのかな?
と、時に感慨深くなることがあると思います。
しかし、残念ながら上記したように2歳未満の赤ちゃんというのは
その「経験自体」が、記憶に残ることは基本的にありません。
少し残酷な表現ですが、”自分は覚えているか”と考えて見ましょう。
「楽しかった」や「嬉しかった」といった、何となくの記憶がある方でも
「はっきりした過程」に関しては、しっかりとは覚えていないと思います。
この幼児期のことを忘れてしまっていることを、「幼児期健忘」と呼びます。
人間の記憶力と「言語中枢」は、密接につながっており
ある程度喋れるようになってからでないと、記憶は定着しないとされます。
クーイング(あ~う~等の言葉になっていない声)ではなく、
単語と単語をつなげて「文章」にできるようになる、2歳くらいから記憶が定着します。

なんとなくは覚えているよう
生後半年ほどで人見知りが始まり、ママ・パパ以外が抱っこすると
突然激しく泣き喚くというようなことが起こってきます。
まだ目はあまり見えていないはずなので、
本能的なものであり、これらは記憶力とは関係ありません。
しかし、自分が経験したこと(散歩に行ったこと等)を
生後3ヶ月であれば、1~2週間ほどは覚えているということも分かっています。
つまり、赤ちゃんは、覚えていたことを早めに忘れてしまい
大人になるまでは覚えてはいないということです。
少し残念だな、と思てしまうママさんもいるかもしれませんが
「覚えておいて欲しい」と願うのではなく、
「一緒に楽しい時間を共有できた」ということを、変わりに覚えておいてあげましょう。
感情はどのようにして芽生えていくのか?
かまってあげると・・・ニコニコしたり
放っておくと・・・泣き始めたりと
赤ちゃんにも、生まれた時から感情があるように思われています。
しかい、感情・情緒が芽生えるには意外と時間がかかるものであり
実際には、「感情から」反応を起こしている訳ではないことも多いのです。
喜怒哀楽といった、基本的な感情が揃うのは生後半年以上かかると言われます。
特に生まれてから3ヶ月くらいまでは、
- 楽しくて笑っている
- 嬉しくて笑っている
- 悲しくて泣いている
ということではない場合が多いと考えられます。
放って置かれるのが悲しいのではなく、身の危険から守ってもらうために泣いています。
また、”保護者からの注目を浴びようとしている”ということに加えて
防衛本能として、”かわいらしさ”を出しているという意見もあります。
現実を知ってしまうと、少し複雑ですね。
感情を身に付ける過程
しかし、感情はしかっかりと芽生えていなくても
これらの赤ちゃんの反応に対しして、どういった反応で返してあげるかで
その後に徐々に形成されていく「性格」や、「共感能力」に影響を与えます。
自分がどのように思っている時に、どのように行動すればいいのか・その行動に対して周りが
どのようなリアクションをしてくれるのかを、学びながら徐々に感情を持ち始めるようです。
そうは言っても、生まれた時点でも根本的な感情の種はあるはずです。
母乳を飲んだ後の嬉しそうな表情を「生理的微笑」と呼んでいます。
愛情を持って接しているママさんとそうでない方とでは、
どちらがその種をうまく育てられるかは、明白なことです。
記憶に残ろうが、感情がなかろうが、愛情を持って接するしかないのです。